破産申立をしても残せる物(自由財産)と残せない物
破産申立をすると、預金や自宅にある現金はどうなる?
自宅のテレビや冷蔵庫、洗濯機といった家財道具はどうなる?
破産申立を検討されている方が抱く素朴な疑問にお答えします。
まず、家財道具ですが、骨董品等の高価品を除けば、基本的には「残せる物」となります。
法律的には「差押禁止財産」といい、ほとんどの家財道具がこれに該当すると考えてよいでしょう。
また、差押禁止財産に該当しない場合であっても、その物自体に財産的価値が認められなければ、いわば不用品ですので「残せる物」となります。
例えば、2台目のエアコンは差押禁止対象財産には該当しないと考えられますが、最新式モデルでもない限り財産的価値はほとんどないと考えられ、「残せる物」になる可能性があります。
家財道具の多くは中古品であり、買取業者は存在するものの、一般に市場で流通しているわけではないので、財産的価値が認められないケースがほとんどです。
大まかな考え方は以上のとおりですが、個別のケースについては、ご相談ください。
破産時でも残せる物(自由財産)の具体的な分類について
1.破産時でも残せる物について
※一般的に家財道具は、ほとんどのものが含まれます。
破産時でも残せる物(自由財産)一覧リスト
破産時でも残せる物(自由財産)を以下のとおり一覧にまとめておりますので、ご確認くださいませ。
「○」…基本的に残せるもの
「△」…条件によっては残せないもの
「×」…確実に残せないもの
「※」…例外条件
-
・冷暖房機
- エアコン
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- ファンヒーター
- ○
- こたつ
- ○
- 扇風機
- ○
- 電気カーペット
- ○
- 冷風機
- ○
-
・電子機器
- テレビ
- ○
- ※複数台所有かつ超大型液晶テレビで財産的価値がある場合など
- パソコン
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- ノートパソコン
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- 電話機
- ○
- ファックス
- ○
- コピー機
- ○
- プリンター
- ○
- 携帯電話
- ○
- iphone・ipad
- ○
- タブレット製品
- ○
-
・その他電子機器
- CDラジカセ
- ○
- DVDプレイヤー
- ○
- ビデオデッキ
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- コンポ
- ○
- スピーカー
- ○
- アンプ
- ○
- ドライヤー
- ○
- シュレッダー
- ○
-
・乗り物
- 自動車
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- バイク
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 自転車
- ○
- 電動機付自転車
- ○
- 電動車いす
- ○
- 車いす
- ○
-
・家庭機器・用品
- キッチン器具
- ○
- 電子レンジ
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- オーブン
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- ガスコンロ
- ○
- 食器洗い乾燥機
- ○
- 炊飯器
- ○
- 生ゴミ処理機
- ○
- ホームベーカリー
- ○
- ホットプレート
- ○
- 掃除機
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- ミシン
- ○
- 給湯器
- ○
- ※複数台所有かつ財産的価値がある場合など
- 空気清浄機
- ○
- 除湿機
- ○
- 米びつ
- ○
- 物干し竿
- ○
-
・お子様遊具・関連物
- 子供用遊具全般
- ○
- ゲーム機
- ○
- 三輪車
- ○
- 一輪車
- ○
- チャイルドシート
- ○
- ベビーカー
- ○
-
・趣味
※以下の「趣味」に分類されるものは、最新モデルやアンティーク品等、特別に財産的価値がある場合は除く
- ゴルフクラブ
- ○
- ゴルフバッグ
- ○
- サーフボード
- ○
- 釣具
- ○
- カメラ
- ○
- トレーニング用器具全般
- ○
- エアロバイク
- ○
- ランニングマシーン
- ○
- バーベキューコンロ
- ○
- 健康器具
- ○
- スキー用品
- ○
- スノーボード
- ○
- 水槽
- ○
- ギター
- ○
- キーボード
- ○
- ピアノ
- ○
- 電子ピアノ
- ○
- オルガン
- ○
- テント
- ○
- マッサージ機
- ○
-
・衣類・関連物
- 衣類全般
- ○
- スーツ
- ○
- スーツケース
- ○
- ネクタイ
- ○
- シャツ
- ○
- カバン
- ○
-
・装飾品
- 時計
- △
- ※ブランド時計等中古品市場が確立している場合
- 指輪
- △
- ※金やプラチナはそれ自体価値がある
- ネックレス
- △
- ※金やプラチナはそれ自体価値がある
- ブレスレット
- △
- ※金やプラチナはそれ自体価値がある
- 金
- △
- ※金やプラチナはそれ自体価値がある
-
・家具・関連物
- カーテン
- ○
- 衣装ケース
- ○
- 椅子
- ○
- 収納ラック
- ○
- 食器棚
- ○
- テレビ台
- ○
- ブラインド
- ○
- 本棚
- ○
- たんす
- ○
- ソファー
- ○
- ベッド
- ○
- 傘立て
- ○
- 靴箱
- ○
- カーペット
- ○
- 布団
- ○
-
・宗教物
- 仏壇
- ○
-
・お金・金融
- 現金
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 預貯金
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 積立金
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 生命保険
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 生命保険解約返戻金
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 敷金・保証金
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 退職金
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 電話加入権
- ○
- ※現状ほとんど財産的価値がない
- タンス預金
- △
- ※99万円を超える場合は難しい
- 同居親族の預金
- ○
- ※名義借用の場合
- 同居配偶者の預金
- ○
- ※名義借用の場合
2.現金や預貯金等、下記6種類の財産については、破産申立に伴い合計99万円まで「残せる物」となる可能性があります。
・預貯金・積立金
・保険解約返戻金
・自動車
・敷金・保証金返還請求権(※契約書上の額から滞納賃料と明渡費用等60万円とを控除した額で評価します。)
・退職金債権(※原則として、支給見込額の8分の1で評価します。)
・電話加入権(※ただし現在市場価値はほとんど見込まれません。)
なお、生命保険や学資保険については、契約者名義があなたであれば、あなたの財産となります。
3.残せない物について
上記「2.」以外の財産。不動産、有価証券、貸付金など。
隠し財産について
破産手続は一言でいうと、いま持っている財産で換金できるものは換金して、債権者に対して平等に配当するという手続です。
資産価値のあるものを隠すと、本来なされるべき債権者への配当がなされなくなり、債権者が財産的損失を被ることになります。
当然のことながら、この行為は法律上禁止されており、違反した場合は詐欺破産罪という犯罪に問われる可能性があります。
意図的に隠したわけではないものの、後日その存在が明るみになった財産については、本来残せるものであったにもかかわらず、残せなくなる可能性もあります。
すべて正直に申告して破産手続に臨むことが重要です。
破産 その他のQ&A
Q 破産申立をすると、「残せない物であると判断された個人所有物に関して」は差押さえや無理やり没収されるようなことになりますか?
A 差押などの強制執行を受けることはありませんので安心してください。高価品等「残せない物」に関しては、基本的に破産管財人により換価されることになりますが、その場合でも無理やり没収されるようなことはありません。原則として、適正な評価額等について協議した上で手続を進めていくことになります。
Q 会社が破産した後でも自分のノウハウをいかして仕事をしたい。会社名義となっている自動車やパソコンを残すことは可能ですか?
A 会社の財産は、すべて換価対象となります。よって、従業員の方が適正価格で購入することにより、残すことは可能です。
Q 個人的に所有している株券の合計評価額が150万円相当に価するのですが、株を売却しなければなりませんか?
A 実際に150万円の価値があるのであれば、換価の対象となります。ただし、株式の場合、評価額が本当に150万円かどうかが問題となります。証券取引所に上場しているような株式であれば、相場がありますのですぐに評価できますがが、そうでない株式については一義的に評価できないことが通常です。例えば、株式譲渡制限のある会社の株式では、換金困難なこともありえます。
Q 弁護士に相談する前に、破産申立の前に個人名義で所有している車や家を配偶者や親族の名義に変更すれば、なんとか財産を失わずに済みますでしょうか?
A 結果として失う可能性が高いばかりか、破産手続自体が円滑にいかない可能性もあるので、このようなことは絶対にやめてください。
破産直前に財産を減少させる行為は債権者を害するものであり、否認権行使の対象ともなります。
Q 個人の通帳には5万円しかありません。破産後には生命保険を解約して解約返戻金150万円を頼りに生活しようと思いますが、 破産時は、生命保険の解約は必須になりますか?
A 必須ではありません。解約返戻金の額にもよります。
破産の際に確保できる財産は、原則として99万円までです。それを超える財産は、破産財団(債権者に対する配当財源)に組み入れられることになります。
解約返戻金が150万円の保険に関しては、残念ながら解約の上、破産財団に組み入れられることになるのが原則です。しかしながら、破産申立に先立ち解約し、返戻金を日々の生活費や破産予納金、相当な弁護士費用に充当することは、「有用の資」として支出が認められる可能性があります。詳しくは弁護士にご相談ください。
Q 個人名義で賃貸マンションを借りて家族で生活をしていますが、家を出なければなりませんか?
A 直ちに家を出る必要はありません。基本的に家賃を支払っていれば居住し続けることは可能です。ただし、身の丈以上の家賃を要する住居に住んでいるような場合は、収支を見直すためにも、退去することを考える必要があるかもしれません。
Q 車を個人名義で所有していますが、現在の中古車市場価値は平均で100〜120万円ぐらいの車です。住んでいる場所が車の必要な地域で所有できないとなる場合、今までの生活に支障が出てしまい困るのですが、それでも残せないのでしょうか?
A 破産に際して残せる財産は、原則として合計99万円までとなります。自動車も残せる財産に含まれますが、この制約が及んでしまいます。自動車が必須であれば、低廉な中古車を購入するという方法も考えられますが、破産に際して財産を費消させてしまう行為は後々問題になることも多いので、専門家である弁護士にご相談ください。
Q 今から半年前に個人名義で購入した40万円のデスクトップパソコンですが、現在市場価値は20万ぐらいです。破産後の仕事に必要なのですが、手持ちの現金や預金を含めると99万円を少し超えてしまう恐れがあります。その場合、弁護士に相談する前に自分で99万円未満になるように調整すれば良いでしょうか?
A 素人判断は大変危険です。破産に際して財産を費消させてしまう行為は後々問題になることも多いので、専門家である弁護士にご相談ください。
Q 先代が使っていたロレックスに思い入れがありますが、何かしらの理由があれば残せますか?
A 困難と思われます。ロレックスなどのブランド品は、市場において一定の価値を有しております。また、時計については「残せる物」の対象外であることから、換価対象となることが殆どと考えられます。
Q 同居親族が先代から受け継いでいる土地を所有していますが、破産申立は、私の配偶者や同居親族の財産も対象になりますか?
A 絶対に対象にはなりません。あくまで申立をする本人の財産のみが換価対象となります。
Q 私がつけている結婚指輪はプラチナで出来ています。妻も同じものをつけていますが、合計が99万円を超す場合は、 残せないものであると判断されますか?
A 奥様の指輪はあくまで奥様の所有物ですので、換価対象とはなりません。あくまであなたの指輪の価値のみが問題となります。ただし、通常指輪に用いられている金属は少量ですので、財産的価値はないと判断されることが殆どと思われます。
Q 破産とは、何もかもを失うという事では無いのですね?
A 違います。あくまで経済的再生のための手段の一つです。
破産に関しての不明点や迷うこと、ご不安はまず私に一度ご相談ください
何事についても素人判断は禁物です。事件はすべて生き物であり、その適否を判断するためには非常に高度な法的知識と実務経験が必要となります。疑問があれば法律専門家である弁護士にお尋ねください。
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