倒産会社の本音を見抜いて被害回避を!!

取引先の雲行きが怪しいな、と思っていたら、突如弁護士からの通知が・・・倒産会社からのメッセージは突然やってきます。しかし、本当にそうなのでしょうか?

倒産会社の視点に立って考えてみれば、様々な兆候が見えてくるものです。そのことを、もっともよく知るのは、倒産手続を数多く手がけている弁護士をおいて他にはありません。

このコラムでは、弁護士 田中が、弁護士としての実務経験を経て得たノウハウの数々をお伝えいたします(今後加筆することもありえます)。

以下、本文では便宜上、倒産直前の会社があると仮定し、その会社を「対象会社」と呼ぶこととします。

◎まずは対象会社からのサインをキャッチすること

~対象会社の倒産の可能性やその時期を推し量ること~

これがある程度の確度をもってできれば一人前の債権管理者です。多くの方は、前触れもなく関連企業が倒産し通知が来てはじめて憤慨し施すすべがなく困り果てます。

でも、実際はそうでもありません。隠しても隠しきれない兆候。どのようなケースであれ、それは必ずあるのです。知恵と知識を働かせて、その情報をいち早くキャッチすること。東日本大震災といった国難を受け、我が国経済はさらに苦境の様相を呈してきましたが、御社が勝ち抜いていくためには、持てる限りの英知を結集して賢く立ちまわる必要があるのです。

倒産会社の立場になったとき、倒産する直前のサインとして、3つの象徴的行動があると考えられます。

では、各項目の解説をしていきましょう。

ケース①「期前弁済」

何かはっきりしない理由をつけて、支払期日でもないのに、前もって払おうとする対象会社には要注意です。

一見、御社にメリットのあるこの提案も普通に考えれば必要のないことです。そこには秘められた目的があることが多いのです。

この目的とは、後に、法的手続をとった際の混乱をなるべく防止するための債権者減らしであったり、起こりうる道義上の責任追及を回避するものであったりします。
逆に言いますと、対象会社から権利意識の高い、うるさい会社だと思われていれば、倒産の前に弁済を受けることができるかもしれないのです。

●ポイント
他社を出し抜くためには、日頃から対象会社と密な連絡をとり、適切・適時のクレームを言うことが肝心です。

ケース②「支払猶予の依頼」

次に、比較的わかりやすいのは、対象会社から手形のジャンプや支払延期の要請等があった場合です。

背に腹は代えられず資金繰りがしんどいことを外部に表明しています。

このような話が来た場合、信用状況を疑わない人はいないでしょう。

管理担当者としては、原則として倒産状態にあると判断する方が、その後に適切な対応がとれることが多いでしょう。
ただし、往々にして、会社経営者は極力倒産という事態を回避したがります。これらの動きがなされても、すぐに倒産というわけには至らない可能性もあります。

そうすると、対象会社から支払い猶予の依頼が舞い込んできた場合、無条件で応じるのではなく、とにかくライバル会社よりも一足早く、代表者やその関係者から保証を取ったり、対象会社の商品に譲渡担保を設定したり、債権譲渡登記をしたりと、各種の担保設定を試みてみましょう。
(※もちろん、このあたりの手続きがわからなければ、当事務所にご相談ください)

倒産直前の担保設定は後に否認等をされる可能性が高く、倒産時点より遡れば遡るほど、その可能性は低くなるからです。

●ポイント
単に対象会社の支払猶予の申入れを承諾するだけではなく、新規あるいは追加の担保を提供してもらえないかを模索しましょう。

ケース③「手形・小切手の大量発行」

キャッシュフローがしっかりしていれば、そもそも倒産することはありえません。キャッシュフローの破綻は、最大にして唯一の破綻原因と考えても過言ではありません。

借入や信用取引が急増すれば、それはキャッシュフローがおぼつかなくなっている証です。

羽振りが良いようでも、これまで現金決済だったのが手形、小切手に切り替わったり、代金決済に占める手形、小切手の割合が多くなってきたら、十分に注意しなければなりません。

●ポイント
手形、小切手だからといって決して安心してはいけません。代金決済に占める現金、手形等の割合をチェックし、現金の割合が低下してきた場合は要注意です。

その他「専門家への相談」

倒産直前期は、ほとんどの社長が弁護士や税理士等の専門家に相談に行きます。

普段は社内にいた社長が頻繁に外出しだしたら怪しいサインです。日頃から対象会社と密に連絡をとりあっていれば、ライバル会社には気づくことのない変化も事前にキャッチすることが可能となります。

なお、これまで述べてきたような兆候が取引先に見受けられた場合、なるべく早い段階で様々なノウハウを有する当事務所にご相談なさることをお勧めいたします。

●ポイント
日頃から対象会社とコンタクトをとり、情報収集に努めることが、債権管理の大原則です。

◎落とし穴を回避するテクニックとは?

対象会社が破綻する直前の回収行為は、否認対象となりかねません。
直前に担保を獲得しても無駄になる可能性があります。
このような事態を回避するためにはどうすればよいのでしょうか。

◆相殺を試みてみましょう!!

まずは、御社が対象会社に対して、売りも買いもある場合、買いを増やすのも一つの方法です。
後に相殺権を行使できるからです。

数ある回収方法の中でも、最も簡易な回収手段といえます。

◆担保取得については慎重に!!

破産法等で否認対象行為とされているのは、既存債権のための担保設定です。
対象会社やその代表者が担保設定に協力的であれば、それは要注意です。

こちらが言うがままに、登記用委任状や印鑑証明書を交付してくれるようになったら、倒産が間近だと考えてよいでしょう。これらを頼りに担保設定しても、後に否認されることになるかもしれません。

逆に言えば、新たに生じる債権を担保とするための担保設定は、原則として許容されます。

どうしても対象会社に対して信用を供与しなければならない場合、追加で担保を要求し取得することも法的には許容される可能性があります。

◆支払集中日の後は要注意です!!

とりわけ対象会社が民事再生をもくろんでいる場合、倒産に至る前に原材料を調達しきってしまうことが考えられます。

在庫の原料や商品を抱えて、なおかつキャッシュポイントが最も高い状態が、民事再生申立てのタイミングとしては最良なのです。

ということは、対象会社に対する支払集中日の後は要注意といえます。

したがって、対象会社の支払集中日の前に、買いを増やすというさくも有効となる場合があります。

◆さいごに

様々な方法、対策を紹介してきましたが、いずれも債権管理の鉄則ともいえる当たり前のものが多いです。

しかし、「倒産会社の本音」という視点を介することによって、今まで見えてこなかったものがみえてくるようになります。

それは、対象会社も土壇場であればあるほど、優先順位を付して、相手を選別しているという事実です。

対象会社と密に連絡を取り合い、情報収集に努めることや、当事務所に依頼して弁護士から内容証明郵便を発送したりすることなどは、この優先順位を上昇させる手段に他ならないのです。

(以上のコラムは「月刊近代中小企業 2009年4月号」に掲載された当事務所田中弁護士の原稿を、当事務所において若干修正・加筆したものです。)

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